昔とあるシンクタンクで一時期働いていた時に、そこで主催する講演会の「将来の総理大臣候補」という企画に数名の議員の方を招いたことがありました。
その中にまだ首相になる前の安倍さんもいらしたのですが、受付にいた私たちの前を通る時にも軽く会釈をして歩いていかれて、スマートな人だなぁと後ろ姿を見送ったのをよく覚えています。他の方は当たり前のように素通りで、そんな風に「周りの人が見えている」と感じられたのは安倍さんだけだった。
招いた方は全員、その後総理大臣になられて、麻生さんのあのまんまの苦笑してしまう毒舌っぷりも当時から面白かったけれど、安倍さんの醸し出す柔らかさは接した人みんなが嫌いになれないものだったんじゃないかと私でさえ思います。
また別の講演中、何かの対応で会場後方にあった受付を離れ、ふと気配がして振り返ると受付になぜか座っていたのは森元首相。あわわわとお席を用意しようとしたら、「いや僕ここでいいんだ」とトトロのような存在感でつぶやかれてしまいました。
すいませんここは受付でして・・と言ったら「あぁ、そうか、ここは君の席かぁ、それじゃぁダメだねぇ」とのんびりと立ち上がり、(いや私は構わないけど、遅れて受付に来る人が仰天しちゃうから、、)と思いながら他のスタッフと慌てていたら、いや後ろでいいんだ、と後方のスタッフ用のパイプ椅子に座ろうとしたりで、私たちの静かなてんやわんやで森さんの姿に気付いた講師から声をかけられてしまい、講演と全く関係ないのに結局会場中の拍手で迎えられてしまったことがありました。
気付かれないようにこそっと立ち寄られただけだったようで、ご本人はバレちゃったなぁと笑っていたけれど、偉ぶることのない姿は、そのずっと後の失言などで叩かれるのを見ても、多分普段は優しいおじいちゃんなんだろうなぁという印象のまま変わらない。それもまた失礼なのかもしれないけれど。
葉山でお店を始めた一年目、GWに毎年開催される葉山芸術祭という町全体を使ったイベントに、トイカメラの撮影活動が語源でもあるkototoyもお店で自分達の写真展を開いて参加しました。その時は選挙前でも何でもなかったのですが、選挙区の若い議員の方がふらりといらして、写真についてお話したりしました。
名前を売るための強引な会話もせず、とても自然な感じでトイカメラの話をしたりして、多分全ての参加者のところを歩いて回ってるだろうに色んな分野の会話をして大変だなぁと容易に想像できたし、選挙前でもないのにコツコツと市民の元に出向く政治家さんもいるのだなと驚いて、その後影ながら応援していた。今回当選されたようで良かった。
そのまた昔、メロリンQから俳優として活躍していた頃の山本太郎氏を渋谷で見かけました。メロリンQだ!と人だかりが出来てしまうほどの握手の求め全てに、ありがとう!ありがとう!と応じていて、優しい人だねぇとその姿を眺めながら私たちは真後ろを歩いた。
その後いつしか政治家に転身した時、その時の姿がそのまま結びついて何も不思議ではなかったし、選挙活動もきっと無理なくあんな感じで対応していそうに思える。知らないけれど。