時々「このお店は何年くらいやってるんですか?」と聞かれて、8年です、9年です、と答えると「あ、そんなに長いんですね・・」という反応をされてしまい、何年目くらいを想像されていたのだろうかと逆に気になることがありますが、葉山でお店を開いたのは18年前なので、それまでの準備期間も含めると私なりにですがカフェの仕事に向き合ってきた時間は長い方なのではないかと思います。

桐生にはお店をやるずっと前から桐生天満宮の骨董市によく来ていて、雰囲気が落ち着いていてとても好きな街でした。
チェーン店ではない美味しいご飯屋さんやパン屋さんがたくさんあって、美味しい珈琲屋さんがあって、しかもそれぞれがそんなに遠くない距離感で楽しめる、たまに帰省する時に楽しみに遊びにくる街。
群馬でお店をやるなら、という選択肢を考え始めた時、桐生がいいなぁとぼんやり考えていましたが、実際に桐生に決めた時も、お店を始めた後も、『なんでこんな何もない、つまらない街でお店を?』と周囲の人やお客様からものすごくよく聞かれて、つまらないんだなぁと割と意外に感じていました。
そういうことを聞かれるくらいだから、きっと、このお店もそのつまらなさの一部なのだろうと思いながらお店を開けていた中、通ってくれるようになった最初のお客さんは、一人の男の子でした。

多分その頃は学生さんだったと思うけれど、いつも自転車に乗って本を片手に珈琲を飲みに来てくれて、途中でお代わりをしながらゆっくり読書をして帰っていく。何も聞かれないし何も詮索されない、ただ当たり前のように流れていく “本を読む時間“ 。
開店から丸10年。誰かが静かに過ごしてくれるそんな時間が、いつもそっとこのお店を癒し続けてくれました。
細かく振り返れば、古い建物の手入れや環境の変化など色々なことがあって、いまだに大変なことだらけですが、何より本当にたくさんの温かな時間がずっと心に残っている、そんな10年でした。

11年目の夏も相変わらず暑すぎて、とにかく秋が待ち遠しい。