私のヨーグルト。

お引越しをされるというお客様からのご報告に、そういえばそんな時期だとうっかりしていたことに気がつき、残念で胸が痛むと同時に、このお店がすごく好きでした、というお言葉に心が温まり、また複雑な気持ちを抱える季節。

20年ほど前のことですが、当時『エルピアヨーグルト』というとても好きなヨーグルトがあって、いつも行くスーパーでそれを必ず買っていました。

最初の頃は目立つようにたくさん置かれていたはずが、だんだんと隅にいき、数も減り、最後は一番端っこにさみしく2つだけ並んでいるという状況になって、(ここでこれを買っているのは私だけかもしれない)と思いつつ買っていたところ、ある日ついに棚から忽然と消えていました。

売り切れたような形跡もなく棚は他のヨーグルトでいっぱいで、嫌な予感がしながらもすぐそばで品出しをしていた店員さんに「(私の)エルピアヨーグルトは売り切れですか?」と念の為聞いてみたら、「あ、生産終了になったそうです〜」と言われて、えぇっ!?と衝撃を受け、家に帰ってメーカーさんの連絡先を調べて「(私の)エルピアヨーグルトが生産終了って本当ですか!?」と勢いよく電話しました。

ご年配の気配のする担当の男性の方に電話を繋いでくれて、何を話したかは記憶にないものの、(多分「こんなに大好きなのに・・!」という熱のこもった恨み言)電話を切るときに「いやあ、嬉しいなぁ、こんな風に電話までかけてきてくれるなんて・・!」とお礼を言われたのが印象的で、その時はなぜそんなに感激しているのだろうと思ったりもしましたが、今こういう仕事をしていると、その気持ちがとてもよく分かるようになりました。

たくさんお店があって、たくさん選択肢がある中で、このお店を選んでもらえる理由というのは人それぞれだと思うので、ニーズに応えられていないかもしれないなと落ち込んだりすることも私にとってはいつもの日常で、ここが好き、と思ってもらえたり、通ってもらえたりすることは、最初にカフェを始めてから17年くらい経った今でも、やっぱり信じられないほど嬉しい出来事です。

私もあの時電話しておいて良かった、こんな人もいると知ってもらえて良かった、とふと思いました。

そしてうっかりしていると、桜餅の季節もあっという間に終わりそうです。